VWPと実験の流れ VWPと実験の流れ

以下、視線計測実験の一種であるVisual World Paradigm と 実験の全体の流れの概要を述べていきます。

VWP とは?

Visual World Paradigm (VWP) は視線計測実験の一種です。 言語の実験には音の識別や語彙の存在を確かめる実験、 文の読み時間を測る実験など、さまざまな種類があります。 なかでも視線計測実験はアイトラッカーという 視線を計測する機器を用いて実時間のデータを取得できます。 視線計測実験には文を読む目の動きを測るものと、 画面に移る光景のどの部分を見ているかを計測するものがあり、 中でも後者は Visual World Paradigm と呼ばれています。

特徴としては実時間で非侵襲性、 特別な指示が不要という点があります。 実時間なので即時的な言語処理(文理解や語彙理解など)を検証できて、 非侵襲性なので被験者の負担が少ないというメリットがあります。 また特別な指示が不要な点は 「次の単語を見るためにはボタンを押して」 などと被験者に伝える必要はないため、 言語の習得が発達段階にある参加者(主に低年齢層)にも 協力を依頼できます。

デメリットは明らかにコスト面です。 通常の実験はスマホでもできるものもあるので、 同時に数十人への依頼が可能ですが、 VWPでは同時にできるのは用意できる機材の数に依存します。 したがってデータを集めるのに時間もかかります。 実験は旨い、安い、早いがベストなので、 VWPを使うならVWPでしかできない実験をしたいものです。 ただ、実時間で特別な指示が不要、という部分では 強みのある手法です。

実験の流れ

実験計画

  1. もしaならばbになる、といった 観測可能なbを用意します。例として、 もし人の文処理(音素、形態素、語彙、なんでもいい)が モデルaならばこの画像への注視時間がこのタイミングで増える、 のようなbを用意します。
  2. 交絡している要因が無いか考えます。 「aならばb」は「bならばa」を保証しないので、 bとなったら本当にaを支持できるかをよく考えます。 例えばL2単語の頻度がaなら、単語の長さという要因でも 説明できてしまうかもしれません(交絡)。 そういう交絡を潰すためには単語の長さも要因としてあげるか、 単語の長さを同じに統制します。
  3. ある程度かたまったら 1. 実験の目的 2. 被験者 3. アイテム例 4. procedure をまとめてゼミなどの場所で共有しましょう。 実際にデモ実験を作ってもいいですし、 パワーポイントなどで呈示するデモを作成すのも 恐らく効果的だと思います。 特に、交絡は実験計画の時点で潰さないと 追実験のコストがかかったり、 そもそも主張ができなくなってしまい、大きな手戻りが発生します。 他の方からツッコミをもらいましょう。 十分な目があれば、全てのバグは洗い出されます。

実験刺激

上のデモ実験のアイテムを増やすだけで実施できる場合は増やして終わりです。 ただ、まだデモ実験を作成していない場合は以下の手順を踏みます。 特にVWP実験の話をしているので、 利用するソフトウェアの名前などが出てきますが、 細かい話は次のページを参照してください。 詳しい実験の作成方法はReadingsの資料を参照してください。

  1. EprimeとE-prime extention for Tobiiを用いた実験のテンプレートを取得
  2. 仮説検定に十分な数のアイテムを用意し、 呈示する際のリストを「ラテンスクエア」という方法で作成
  3. テンプレートを調整し、自身の仮説検定に使えるデータを取得できる実験に変更
  4. 作成した実験で身内の4人ほどにパイロット実験を実施し 以下を確認
    • 得られたデータが実際に分析できるフォーマットになっているか
    • 想定しているリストが回っているか

以上の工程でデモでは分からなかった問題が発覚した場合は 修正します。

実験

  1. 被験者を募集
  2. 実験を実施
  3. 取るたびにデータが想定通りかを確認

分析

  1. データを整形
  2. 可視化
  3. モデルを作成して要因の効果を検証

詳しくはVWP の実験結果の分析で説明します。

まとめ

基本的には仮説を定めて実験計画を立て、実験を作成し、 被験者募集と実験の実施、分析の流れになります。 次はVWP の機材配置と実施になります。

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